【訪問診療15年】コラム3~訪問診療をうけるきっかけ~
表題の通り、2007年から始まった当院での歯科訪問診療は、
今年で15年を迎えました。ここまで続けてこれたのは
ひとえに支援していただいている皆様のおかげと思っております。
今回はコラムその1で触れた「なぜ」の部分を深掘りします。
歯科訪問診療をうけるきっかけはさまざまあります。
印象に残った患者さんを紹介します。
※なお、ここで紹介する方は事前に個人情報に関する同意書にて同意を得ており、
個人が特定できない形で紹介いたします。
〇余命1ヶ月の40代女性
経験豊富な主任介護支援相談員(ケアマネ)から、急いだ口調で連絡が入りました。
『余命わずかで口が痛く食べれないからとにかく診てほしい』と。
情報収集もそこそこに、患者さんのご自宅へ急行しました。
患者である女性と、介助者であるご家族が揃っており、
ご依頼されたケアマネにも同席していただきました。
電話でケアマネからは余命はあまり長くない旨の情報をいただいており、
いろいろなことを想像していましたが、実際虫歯や歯周病より、
口の渇きが著しく、このことが原因で口が痛いことがわかりました。
すぐさま、状態を評価した上で、通常の治療に加え、
保湿剤を用いたケアをおこなうとともにうがい薬を用いたうがいを指導し、
初日の診療は終了。10日後に歯科衛生士とともに2回目の診療に伺うと
患者さんは初日より息をきらしながらも頑張って、診療に臨み、
こちらの指導に熱心に応えていらっしゃいました。その後も
指導と診療を通して、口の中が潤い始めたと思った頃、
診療初日から約1ヶ月で天国へ旅立たれました。
ご家族からは『日に日に体の具合は辛くなっていたけど口が楽になって良かった』
とおっしゃっていました。
〇老健施設から依頼された男性
ある介護老人保健施設(老健)に(当時)いらした管理栄養士さんから
依頼を受けて、老健に入所されていた高齢の男性の義歯をつくる事になりました。
初日訪問した際、患者さんからは形のあるものを食べたいとおっしゃり、
実際老健施設での食事はペースト状のどろどろしたものでした。
義歯を作製する中で、患者さんから今後のことなど、さまざまな思いを聞かせて
いただきました。
そんな中、初日訪問から1か月足らずで老健を退所し、自宅に帰ることになりました。
当院で自宅でも引き続き診療を続け、無事義歯ができあがり、
この義歯で、たくあんやせんべいをバリバリ食べることができるようになりました。
何でも召し上がられるようになった時の患者さんの笑顔は今でも忘れません。
口から食べられない方に対しては、誤嚥性肺炎発症予防の為の診療・ケアを
希望されることもあります。
口が乾燥して汚れがこびりついている際に、使用する保湿剤の使用法などを指導し、
介入している多職種の方を交えて、情報共有することもしばしばです。
他にもさまざまなきっかけで歯科につながることがありますが、
一番大切にしているのは患者さん本人(またはその家族)の思いです。
それまで歩んできた人生の一部にかかわる中で、その方の思いに
少しでも寄り添って、これからも歯科診療に携わっていけたらと思います。
なお、おおまかな流れは当院HPの「訪問歯科」も合わせてご覧ください。
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千恵歯科医院
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